子供・学校・保護者 それぞれの立場
子供・学校の先生・保護者がどのような立場なのかを、基本中の基本のところから考えてみます。
義務教育は何だ、学校は何だと定義されているのか、法律と政令からしっかり見ていきましょう。
法律や政令に書かれていないことを言う人は・・・「無知か嘘つき」です。
以下、上の↑リンク
文部科学省 の「教育基本法について(規定の概要)」PDFの抜粋です。
第2章 教育の実施に関する基本
第5条 国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。
2 義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。
3 国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負う。
4 国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料を徴収しない。
第10条 父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする。
2 国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。
〇子供に対しての責任は第一義的に保護者が担い、普通教育を受けさせる義務を負う。
〇家庭教育の自主性を尊重し、国及び地方公共団体は、保護者に対する学習の機会及び情報の提供などを行い、家庭教育を支援する。
〇義務教育を公立学校で行う場合は、授業料を徴収しない。
ことが読み取れます。
ではこの、普通教育とは何でしょうか?
普通教育とは、教育(学問)の中身を指すものです。
ものすごくざっくり言いますと、高校の「普通科」は、高度な普通教育と定義されているので、このようなネーミングになっているのです。
要するに、数学特化や国語特化ではなく、全科目まんべんなく学ばせろ!
ということです。
いずれにせよ・・・
学校に通学しろ とは、一切記されていません。
ところが・・・
以下、上の↑リンク
学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)
施行日: 令和二年四月一日 の抜粋です。
第十七条 保護者は、子の満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満十二歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを小学校、義務教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部に就学させる義務を負う。ただし、子が、満十二歳に達した日の属する学年の終わりまでに小学校の課程、義務教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部の課程を修了しないときは、満十五歳に達した日の属する学年の終わり(それまでの間においてこれらの課程を修了したときは、その修了した日の属する学年の終わり)までとする。○2 保護者は、子が小学校の課程、義務教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部の課程を修了した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満十五歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを中学校、義務教育学校の後期課程、中等教育学校の前期課程又は特別支援学校の中学部に就学させる義務を負う。○3 前二項の義務の履行の督促その他これらの義務の履行に関し必要な事項は、政令で定める。
学校とはどのようなものかが規定されているのが「学校教育法」ですから、教育と学校の関係が明確に記されていますが・・・
突然「就学」というワードが出てきましたが、どういう意味でしょう。
「就職」は職に就くこと。
しっかり仕事さえしていれば、普段は在宅で、必要ならたまに出社でOK
こういう会社は山ほどあります。
ならば「就学」は、
しっかり勉強さえしていれば、普段は在宅で、必要ならたまに登校でOK
となります。
こういう内容は、その会社の「就業規則」に書かれていることですから、「就学」にもちゃんとしたルールがあるはずです。先生や保護者が、各自勝手に好き放題決めるものではありません。
そこで気になるのは
○3 前二項の義務の履行の督促その他これらの義務の履行に関し必要な事項は、政令で定める。
督促ってなんだ?? ですよね。
さて、いよいよ核心部分に迫ってきました。
「政令で定める」
じゃぁ、政令なるものを確認してみましょう!!
以下、上の↑リンク
学校教育法施行令(昭和二十八年政令第三百四十号)
施行日: 令和元年七月一日 の抜粋です。
第四節 督促等
(校長の義務)第十九条 小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校及び特別支援学校の校長は、常に、その学校に在学する学齢児童又は学齢生徒の出席状況を明らかにしておかなければならない。第二十条 小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校及び特別支援学校の校長は、当該学校に在学する学齢児童又は学齢生徒が、休業日を除き引き続き七日間出席せず、その他その出席状況が良好でない場合において、その出席させないことについて保護者に正当な事由がないと認められるときは、速やかに、その旨を当該学齢児童又は学齢生徒の住所の存する市町村の教育委員会に通知しなければならない。(教育委員会の行う出席の督促等)第二十一条 市町村の教育委員会は、前条の通知を受けたときその他当該市町村に住所を有する学齢児童又は学齢生徒の保護者が法第十七条第一項又は第二項に規定する義務を怠つていると認められるときは、その保護者に対して、当該学齢児童又は学齢生徒の出席を督促しなければならない。
結論が出ました!!
ここです
休業日を除き引き続き七日間出席せず、その他その出席状況が良好でない場合において、その出席させないことについて保護者に正当な事由がないと認められるときは、速やかに、その旨を当該学齢児童又は学齢生徒の住所の存する市町村の教育委員会に通知しなければならない。
引き続き(連続)七日休み続けると校長は教育委員会に通知します。
土日はもともと休みでしょうから、二日追加して九日に一度学校に顔を出していれば、校長は教育委員会に通知しません。
ざっくり言えば、学校に週に一回程度登校していれば、特に誰からもとやかく言われることはないということです。
おそらく・・・あまり長期に休み続けている子供たちが居ると、事件・事故などに巻き込まれている可能性が出てくるために、安否確認の意味でこの条文があるのでしょう。
一方、長期に休み続けた場合は、校長は教育委員会に通知します。そして、通知を受けた教育委員会は、その保護者に対して、当該学齢児童又は学齢生徒の出席を督促しなければならない。とあります。
校長が通知した場合、教育委員会が保護者に督促します。
教職員や校長が、保護者や子供たちに対し督促するのではありません。
ところが、教育委員会から督促を受けた保護者は、ノーペナルティーです。
特に罰則などは、規定されていません。
学校職員や学校経営者、そして学童を使用(雇って働かせた)者に対して罰則が存在しますが、保護者に対して(もちろん子供たちに対しても)罰則は存在しません。
学校に行く権利・行かない権利
法律・政令を見てきましたので、子供たち・学校・保護者 それぞれの立場は概ねご理解いただけたかと思います。が・・・
なぜか学校には
欠席や遅刻をした子供を直接お怒りになる職員がいらっしゃいます。
子供たちが学校に行くか行かないかの権限は、保護者にあります。
何を勘違いしていらっしゃるのでしょう。
子供が学校やほかの生徒に対して何か迷惑をかけた(他の生徒の権利を侵害した)なら、社会通念上叱るべきです。しかし、遅刻欠席は、他の生徒に何ら迷惑をかけていないばかりか、むしろ他の生徒(や先生)にとっては利益なはずですから、叱られる理由はありませんし、ましてや怒るなど、ありえないはずです。
もちろん、何らかの原因で「通いたいのに通えない」子供たちに対しては、保護者が通わせたいと希望する限り、最善の努力を尽くし、通えるようにしてあげることが学校職員の務めです。成績不振からの不登校など、最優先に全力で対策を講じなければなりません。
逆に、「自主的に通わない」子供たちは、保護者が許可しているなら(連続七日以下の欠席なら)静観しないといけません。もし、保護者が欠席の事実を知らないのなら、保護者に事実を伝えることが学校職員の仕事です。そのうえで判断を下すのはあくまでも保護者です。保護者がもし「叱ってください」とリクエストしたなら、保護者の権限で学校職員が叱ってもいいでしょうが、それはそれで判断の分かれるところでしょう。
だから、
職員が勝手に怒ることは、越権行為であり言語道断なのです。
教育委員会の権限と学校の権限
逆に、授業中に騒いだり、場を乱すような行為を行う子供の存在は、
「他の子供たちの権利」を侵害することになりますから、叱り、諭すことが必要です。
改善できない場合は、教育委員会が保護者に対して出席停止処分を行うこととなります。
以下、上の↑リンク
文部科学省 の「問題行動を起こす児童生徒に対する指導について(通知)」の抜粋です。
18文科初第1019号
平成19年2月5日
各都道府県教育委員会教育長
各指定都市教育委員会教育長
各都道府県知事
附属学校を置く各国立大学法人学長殿 文部科学省初等中等教育局長
銭谷 眞美
2 出席停止制度の活用について
(1) 出席停止は、懲戒行為ではなく、学校の秩序を維持し、他の児童生徒の教育を受ける権利を保障するために採られる措置であり、各市町村教育委員会及び学校は、このような制度の趣旨を十分理解し、日頃から規範意識を育む指導やきめ細かな教育相談等を粘り強く行う。 (2) 学校がこのような指導を継続してもなお改善が見られず、いじめや暴力行為など問題行動を繰り返す児童生徒に対し、正常な教育環境を回復するため必要と認める場合には、市町村教育委員会は、出席停止制度の措置を採ることをためらわずに検討する。 (3) この制度の運用に当たっては、教師や学校が孤立することがないように、校長をはじめ教職員、教育委員会や地域のサポートにより必要な支援がなされるよう十分配慮する。
学校は、当該児童生徒が学校へ円滑に復帰できるよう学習を補完したり、学級担任等が計画的かつ臨機に家庭への訪問を行い、読書等の課題をさせる。
市町村教育委員会は、当該児童生徒に対し出席停止期間中必要な支援がなされるように個別の指導計画を策定するなど、必要な教育的措置を講じる。
都道府県教育委員会は、状況に応じ、指導主事やスクールカウンセラーの派遣、教職員の追加的措置、当該児童生徒を受け入れる機関との連携の促進など、市町村教育委員会や学校をバックアップする。
地域では、警察、児童相談所、保護司、民生・児童委員等の関係機関の協力を得たサポートチームを組織することも有効である。(4) その他出席停止制度の運用等については、「出席停止制度の運用の在り方について」(平成13年11月6日付け文部科学省初等中等教育局長通知)による。
教育委員会は、保護者に対して
「子供を来させるな!」「子供を来させろ!」どちらもOKです。
ただし、「子供を来させるな」には強制力がありますが、「子供を来させろ」には強制力はありません。
一方、校長以下学校職員は、保護者に対して
「子供を来させるな」 も 「子供を来させろ」 も ダメです!
もちろん、出席を促したり、自宅待機を促すことはアリですが、強制や脅迫はいけません。
だから
学校に来ない子供を怒るなんて、ありえない行為です。
百歩譲って・・・「帰れ!」はOKかな・・だけど、「来い!」は100%アウトです。
来てほしいなら、
学校をもっと魅力的な空間にするべく、
自らが努力するべきです
その仕事に就いている限り
それが義務です
義務教育の真価
上記の検証はあくまでも
根本の学力面で遜色がなければ・・・の話です。
そもそも学力面で問題を抱えている場合、法律や政令以前の話です
まずは学校の授業に頼りましょう。
義務教育は、なるべく落ちこぼれを出さず、落ちこぼれても学習面以外(クラブなど)で充実感を与え、子供たちが通いやすくする義務があります。
ですから、学校で長時間の授業をうけて、なおかつ「ついていけない」状況が発生したなら、まず、学校の先生に相談するのが筋です。学校の先生には、教育を提供する義務があります。国が認めた有資格者ですから、すばらしい解決策を示し実行されるでしょう。特に成績下位生に対しては、無料補習や無料習熟度別授業など、特に手厚く指導していただけるはずです。
学校の先生自らが教え、自らが試験を行うことになりますから、教育の一貫性も保たれ、必ず成果となって現れるでしょう。
これこそが、義務教育の理想・真髄ではないでしょうか。
すなわち、学力養成に欠かせない各学年最低限の基礎教育をおこなうためなら、まずは「国が認めたプロ教師」を擁する学校(国民教育機関)に解決策を求め、然るべき助言・指導を受けましょう。無料です。
私立学校では出席停止や停学処分は認められません(有料だから?)が、
退学処分は認められています。